#26 型破りな職人登場! ブドウの搾りカスから生まれる「マール茶」

 無駄をなくしたい--。日常生活を送る上で、そう考える人は沢山いらっしゃると思います。世界的なSDGsの取り組みもまさにそこが原点ではないでしょうか。もちろん株式会社かたすみもそう考える企業のひとつ。高品質な美味しい果物を原料として使う中で、形や傷など見た目の問題で規格外になってしまう果物を積極的に加工し、「無駄をなくしたい」と考えています。

ブドウの搾りカスから造るお茶 それ、美味しいの?

 そんなかたすみが、新たなエシカル商品「マール茶(マールティー)」を発売しました。ん? マール、とは……?? 初めて聞く言葉でした。知っているのは、絵本に出てくる「おばけのマール」くらい(笑)

 実は「マール(marc)」とは、フランス語で「(果実)の搾りカス」を意味し、特に「ブドウの搾りカス」を指しているそうです。さらに「マール(eau-de-vie de marc)」という搾りカスで造る蒸留酒(ブランデー)もあるんだとか。つまり、今回の新商品「マール茶」とは「ブドウの搾りかす茶」なのです。

 初めてこのマール茶の話を聞いた時の印象は「渋そう」。正直あまり好意的なものではありませんでした。でも、飲んでみると渋さなどは全くなく、ブドウの香りとローズヒップのような酸味を感じる味わい。これまで飲んだことのない個性的で新しい味ではありますが、不思議と「雑味」というものが全くありません。これは間違いなくブドウそのもののポテンシャルの高さに由来していると感じました。ブドウがめちゃくちゃ美味しいから、搾りカスのお茶もイケる、というわけ。

 今回は、このマール茶の美味しい背景を探るべく、マール茶の原点である埼玉県小川町の「武蔵ワイナリー」に向かいました。

“有機の里”でスパルタ教育を受けた⁉ 鍛えられた脱サラ組のブドウ職人登場

 “和紙の街”として知られる小川町は、周囲を緑豊かな外秩父の山々に囲まれ、市街地の中央に槻川が流れる自然豊かなエリア。「小川町有機農業生産グループ」も存在し、その輪はいまや近隣市町村にも広がりをみせ、有機栽培農家の数は把握しきれないほど存在する「有機の里」でもあります。野菜やお米はもちろん、有機米の日本酒や有機大豆の味噌があったり、有機の麦でクラフトビールが作られていたり、有機農家があたりまえのように農薬や化学肥料を使わずに農作物を栽培しているのです。

 そんな小川町で、マール茶の原料となるブドウを栽培しているのが、「武蔵ワイナリー」で栽培醸造責任者を務める代表・福島有造さん、54歳。頭に白いタオルを巻き出迎えてくれた福島さんは、職人気質で一見寡黙そうな雰囲気……。でも、「北海道大学出身」という道産子の共通項で一気に話が盛り上がると、「(僕は)北21条に住んでいたんですよ〜」と相好を崩す姿がとてもチャーミングで、実はお話好きな一面もお持ちでした。

 この福島さんこそ、果物本来の生命力と自然の力を深く理解し、完全なる無農薬でブドウを栽培する達人! ですが……。実は福島さんは北大を卒業後、そのまま銀行員として働いた経験を持つ、脱サラ組! 縁あって“有機栽培のツワモノ”たちが集う小川町という環境に身を投じ、有機栽培に並々ならぬ情熱を注ぐ人との出会いを通して得た様々な気付きをブドウ栽培に生かし、遂に型にとらわれない福島さんならではの手法でワインを作ることになります。

型破りな栽培方法で生まれる奇跡のブドウたち

武蔵ワイナリーの独自ルールに「ブドウの糖度が21度以上じゃないとワインにしない」があります。ブドウは、トマト栽培のように脇芽だけを取り、枝を長くし、根も長くする。そうすることで、根から沢山の栄養を吸収し、糖度が上がるんだそうです。ちなみに夕張メロンの糖度がおおよそ12度ですから、21度は相当甘い……。

 武蔵ワイナリーを訪れたのは11月上旬。すでにブドウ畑は収穫が終わり、葉も枯れていました。しかし、偶然にも目の前に一房だけ、もう干しブドウのような状態になった実を発見! その場で捥いで食べてみると、甘さにびっくりでした‼ シワシワで小指の先ほどの小さなブドウの一粒が放つその濃厚な甘さたるや――目を丸くしました。この強烈な甘さが、武蔵ワインの美味しさの秘密のひとつなのです。

 実際に、糖度25度以上になった2020年のブドウで造られた「小公子」という品種のワインを飲んでみると、それはもう一口の重みと厚みがボルドーの上を行くような味わい深さ。「濃厚」という一言では表現しきれない奥深さに加え、ブドウの香りの奥で鼻腔が感じとるのはハーブに似た香り。福島さんの栽培方法を考えると、それは、ブドウが育った土の香りなのかもしれないと思っています。まさしく、これまで経験したことのない味わいでした。

 実は、この武蔵ワインには、もうひとつの秘密がありました。福島さんが着眼したのは、通常の赤ワイン作りでは捨ててしまうあるもの......。そのお話は来月の後編コラムにて☆

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